前院長雑感(南の風)

一歩踏み出すあなたに(後)(2019/04/26)

 11日は⑥ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏(64歳)である。
人材論、組織論の第一人者で、世界で最も影響のある「Thinkers50」に選ばれている。安倍政権の有識者会議にも参加した。
まず、私たちは信じられないほど技術革新のスピードの速い時代を生きているということを知っておきたい。
これは二つのことを示唆する。一つは医療技術の進展で寿命が延びるということ。今の20代は90歳、100歳、あるいはそれ以上の人生を過ごす。その結果、70代や80代になっても自分のスタイルで働いているのが普通という時代になるだろう。
二つ目は人工知能(AI)やロボット技術の急速な進展により、私たちが駆使したり、習得すべき技術が刻々と変化していくという点だ。人生のどの段階でも学習を続ける姿勢が重要で、常に自分のスキルを磨き続ける習慣を人生の前半に身に着けることが必要になる。
もし私が今20代なら、機械に取って代われない人間特有の能力を伸ばすことを考える。それは好奇心や共感、さらに社会性のスキルだ。
もう一つ20代の若者に訴えたいことは、男性が働いて女性が子供の面倒をみる伝統的な家族構造からの脱却だ。欧州では、成功している女性は子育てに理解の深い夫を持っている。(終)
私は江戸時代など昔の人と比較するとき、0.7掛けが適当(今の60歳だと昔だったら42歳)だと言ってきたが、感覚的にも実際にもそのような時代が到来しそうである。60歳定年というのは昔の話で、70代まで働くのが当然のことになってくるのではないだろうか。
AIと競争しければならない時代が来るとは信じられなかったが、医療の現場でも診断学などでは既にAIの力を借りている。
2年ほど前の新入医局員歓迎会で、ある男性医師が「子育てのために休みをとらせてもらいます」という言葉を聞いた時には信じられない思いがしたが、これが普通の時代になっていきそうである。
12日は作家の⑦池井戸潤氏(55歳)である。
慶応大学卒業後都銀に入職、32歳で退職し作家業に。2011年に「下町ロケット」で直木賞受賞。
仕事はあるだけでありがたい。戦争中に苦労した祖母のこの発想は、僕の原点だ。まずは職に就き、自立するのが社会人の一歩だ。
職場で「この人は素晴らしい」という先輩や上司を探し、目標として欲しい。
ビジネスの世界ではけんかしたら終わりだ。そのことは覚えておいて欲しい。多様性の中で生きていることを自覚しよう。
「仕事をしている自分の状況」を俯瞰して見られたらいいね。問題が起きた時、他人をみるように自分を見つめるスキルはきっと自分を成長させ、解決策を導いてくれるだろう。
真剣な挑戦には何かが残る。
今ぼくが20代なら専門職を目指すだろう。ポイントは組織がなくても自立できるスキルを目指すこと。それぞれが与えられた場所で自分らしく生きるために、自分とはどうあるべきか、どんな人生を送りたいかを考えるべきだ。(終)
職場で「この人は素晴らしい」という先輩や上司を探し、目標として欲しいは私の実感でもある。人と比べることは善しとしないが、人生モデルは必要である。また「喧嘩しない」は恩師の井形先生からよく言われていた言葉である。自分を俯瞰する、客観的に見ることは自分を戒めることにもつながる。ともすれば人間は自分を肥大化しがちである。
最後の言葉も全くその通りだと思う。


南風病院画像診断センター政記念消化器病研究所病院広報誌「南風便り」