前院長雑感(南の風)

健診模様(48)健康管理は自己責任か(後)(2019/04/10)

 勿論「自己責任論と弱者排除を振りかざす醜悪体質」などの批判もあることも事実である。朝日新聞デジタルで浜田陽太郎記者は次のように述べている。
「生活習慣病って冷たい言葉だよね。自己責任を過大に評価している。このニュアンスが独り歩きすると、麻生さんみたいな発言になっちゃう」。そう話すのは、首都圏で人工透析専門のクリニックを運営するベテラン医師です。
生活習慣病とされる病気の一つが糖尿病(2型)。これが原因で腎臓が働かなくなると、血液から老廃物を取り除くため透析治療を受けなければいけません。糖尿病を悪化させるのは、長時間労働しながら、安い外食に頼る人が目立つといいます。「目の前のことに精いっぱい、ギリギリの暮らしで健康のことなど考えられない人が多いんです。貧困病という側面がある」と話します。
社会の仕組みが健康に与える影響を研究している東大准教授の近藤尚己(こんどう・なおき)さんは、麻生さんが会見で述べた「(不健康が)生まれつきなら諦める」という言葉が気になったといいます。「不健康が生まれつきかどうかの線引きは難しい」からです。
「子どもの頃に置かれた厳しい環境が積み重なると、大人になってから不健康になるリスクが上がります。自分の努力ではどうしようもない事情は様々あるのに、今の状態だけで自己責任かどうか判断するのはよくないし、事実上不可能です」と近藤さんはいいます。
いま、霞が関の官庁で国の動きを取材していると、この「予防」や医療費の抑制をめぐって様々な新しい動きがあります。「メタボ健診」が導入された時のように、私たちの生活に影響する変化が起きるんじゃないか。今度はそれが気になって、モヤモヤが続くのです。
毎週送られてくる医学書院の医学界新聞(3296号)では、新たな健康観「未病」と医療~人生100年時代に期待される医師の生活処方箋~と題して、神奈川県の取り組みが紹介されている。
この中で黒岩裕治知事は「未病コンセプトは、健康寿命延伸の切り札です。元は中医学の病気を発病する前から治すという意味の言葉を、現代の状況に合わせ健康と病気の間の連続的な変化ととらえ直しました。従来の医療は健康と病気を二元論でとらえるモデルだったと思います。それとは異なるグラデーションモデルの中に未病を位置づけました」と語っている。そして未病改善のカギは「食・運動・社会参加」と述べているが、まさにその通りだと思う。
なお生活習慣病については、偶然にも4月28日の私の担当分の「すいもあまいも」でも取り上げる予定である。


南風病院画像診断センター政記念消化器病研究所病院広報誌「南風便り」